オペラの原点:バロックオペラの楽しみ

バロック音楽をこよなく愛する人に贈るブログ

ヘンデル・オペラの魅力:ロドリーゴ、もしくは、自らに打ち勝つは最大の勝利

ロドリーゴ、もしくは、自らに打ち勝つは最大の勝利(Rodrigo ovvero Vincer se stesso è la maggior vittoria)』は、ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル(1685-1759)が23歳にして初めてイタリア語の台本を元に作曲したオペラです。初演は1707年フィレンツェのココメロ劇場。脚本はFrancesco Silvani(1660-1728もしくは1744)の作品を元にしています。

ヘンデルは、既にハンブルグでドイツ語オペラ(Singspiel)を数曲作曲していましたが、1706年にはハンブルグからフィレンツェに赴き、そこでイタリアの音楽関係者と交流し、この作品を発表しました。なお、続いて作曲されたイタリア語オペラ『アグリッピーナ』はイタリアで大ヒットし、ヘンデルはイタリア人から親しみを込め「親愛なるサクソン人(Il caro Sassone)」と称賛されました。

この作品は、第三幕の楽譜が失われていたことから、長らく再演されることはなかったのですが、1983年にそれが発見され、翌年には再演されました。277年ぶりのことです。以来、世界各地で演奏されています。

粗筋は以下です。

710年、西ゴート王国(今のスペイン)の王ロドリーゴ(ロデリック)は、堕落した前王ヴィティッザを倒し王位についたものの、前王と同じように堕落し、妻エジレーナがありながら、セウタ(アフリカにある王国の飛地領)の伯爵ジュリアーノの妹フロリンダと通じ、子まで生していました。

一方、ジュリアーノは、アラゴナ(シチリアの一地方)の王で、ヴィティッザの遺児エヴァンコを打ち破り、その身柄を拘束します。しかし、ロドリーゴがフロリンダを妻とするとの約束を違えたことから、ジュリアーノは、ロドリーゴへの忠誠を捨て、なんと敵であったエヴァンコに、フロリンダを娶るなら王国の継承を許すと約束します。

ジュリアーノは、その後、ロドリーゴの宰相であるフェルナンドの奸計に会い、捉えられ殺されそうになりますが、エヴァンコに救出され、最後にはロドリーゴの軍を倒します。しかし、エジレーナの嘆願により、ロドリーゴは命までは取られず、妻エジレーナとともに王国から放逐されます。そして、エヴァンコはフロリンダと結婚し、二人は、フロリンダとロドリーゴの子を育てることにします。また、兄のジュリアーノは王国の宰相となります。

オペラ・セリアのお約束で、やはり、君主の寛容さが讃えられていますね。

以下、脇役ながら重要な役回りであるジュリアーノのアリアを紹介します。

第一幕第五場。

エヴァンコの軍を破り、彼を鎖につないだジュリアーノは、その勝利の勢いを以って、さらにイベリア半島へと軍を進めようと高らかに宣言します。

(ジュリアーノ)
統べられざる王位、イベリアへ
掌を持て、月桂冠を広げ
勝利を祝わん
そして大いなる、高貴なる衝突の内、
我らに誉れをもたらし
今日の栄華を約束せん

(Guiliano)
Dell'Iberia al soglio invitto,
Reca palme e sparge allori
Festeggiante la vittoria.
E del grande alto conflitto,
A noi vengono gli onori
Che promette oggi la gloria

参考:Rufus Müllerの軽やかな歌声をお楽しみ下さい。