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麗しのイタリア古典歌曲:マルティーニ作曲 愛のよろこびは

『愛のよろこびは(Piacer d'amor)』は、マルティーニの作品(1784)です。

曲名は知らなくても、たぶん、どこかで聴いたことがある人は多いのではないでしょうか。実は、エルビス・プレスリーの『好きにならずにはいられない(Can't Help Falling In Love)』の元歌が、これです。
プレスリー主演の映画「ブルーハワイ」でもサウンドトラックとして使われていました。

作曲家ですが「マルティーニ」と自らイタリア風に名乗っていたものの、本当はフライシュタット出身のドイツ人でパリで活躍し、当時のブルボン王家の宮廷楽長を勤めていました。本名はヨハン・パウル・エギディウス・シュヴァルツェンドルフ(1741-1816)。

歌詞はイタリア語ですが、原詩はジャン-ピエール・クラリス作のフランス語詩です。実際、この曲はフランス語で歌われることの方が多いと思います。

内容は、女性に振られた男の愚痴に過ぎないのですが、甘く愛らしいメロディーは聴くものを魅了します。

日本では結婚式のBGMに使われることがあるらしいですが、こんな内容の歌詞だと知らないだけなのか、あるいは知ってての皮肉を込めた『冗談』なのでしょうか。


愛の歓びは一日しか続かないが、
愛の苦しみは一生涯続く。

私は彼女のためにすべてを忘れた、あの不実なシルヴィアのために。
だが、彼女は今私を忘れ、ほかの愛に身を委ねている。

「平野を取り巻く海に向かって
小川が静かに流れているうちは、
私はあなたを愛しています」と不実な女は言った。
小川は今も流れているが、彼女の愛は変わってしまった。

Piacer d'amor più che un dì sol non dura;
martir d'amor tutta la vita dura.

Tutto scordai per lei, per Silvia infida;
ella or mi scorda e ad altro amor s'affida.

Finché tranquillo scorrerà
il ruscel là verso il mar che cinge la pianura
io t'amerò.” mi disse l'infedele.
Scorre il rio ancor ma cangiò inlei l'amor.

パリゾッティが、この曲を古典歌曲集に入れなかったら、プレスリーの名曲も生まれなかったということになりますね。

参考:Angela Gheorghiuの歌声でどうぞ。