麗しのイタリア古典歌曲:コンティ作曲 私を燃え立たせるあの炎
以前、バロック音楽研究家であったパリゾッティが、自身の「古典歌曲集」に曲を収録するに当たり、図書館で古い楽譜を漁っていたらしいことを書きましたが、当時は情報が少ないため、収録楽譜の周辺情報が結構間違っていたようです。
『私を燃え立たせるあの炎(Quella fiamma che m’accende)』も、そのような曲のひとつです。
この曲はパリゾッティ(1853-1913)によって『古典イタリア・アリア集(Arie
antiche)』(1914年リコルド社刊)に収録された際、バロック期の作曲家であるベネデット・マルチェッロ(1686-1739)の曲とされました。
そして、全音楽譜出版社の「イタリア歌曲集」でも、マルチェッロ作曲とされています。
マルチェッロは、私が大好きなバロック時代の作曲家の一人なのですが、曲の雰囲気がマルチェッロの他の作品と全く似ていないのが気になってネットで調べてみたら、この曲は、実はフランチェスコ・バルトロメオ・コンティ(1681-1732)が作曲したものであるとのことが、最近判明したとのことです。
そう言われると、確かに、レチタティーボとアリア部分の雰囲気が全く似ていませんね。
1700年頃には既にフィレンツェだけでなく、フェラーラやミラノでもテオルボ奏者として高く評価されていました。その名声を買われ1708年からウィーンのハプスブルク家にてテオルボ奏者として仕え始め、後に、宮廷作曲家にまで上り詰めました。その後、健康上の理由でイタリアに一時帰国しましたが、1732年にウィーンに戻り、その地で死去しました。
まぁ、パリゾッティによって再発見された時とは異なる作曲家の作品で、しかも、誰かが曲の一部を勝手に追加していたことが判明したものの、直向きで燃えるような恋心をせつせつと訴え、聴く者の心を打つ、この曲の魅力は変わりません。
私のすばらしい火は、
私が遠かろうが近かろうが、お前のために決して変わらず、
愛しい人よ、いつも燃やそう。
私を燃やすあの炎を、
私の魂はとても好いている、
それは決して消えなかろう。
そして、もし私をお前の許に返す定めなら、
私の美しい太陽の麗しい瞳よ、
私の魂は別の光を望まぬし、
決して望まなかろう。
Il mio bel foco,
o lontano o vicino ch’esser poss’io,
senza cangiar mai tempre per voi,
care pupille, arderà sempre.
Quella fiamma che m’accende,
piace tanto all’alma mia,
che giammai s’estinguerà.
E se il fato a voi mi rende,
vaghi rai del mio bel sole,
altra luce ella non vuole
nè voler giammai potrà.
もし、このブログを全音楽出版社の担当の方が読まれた場合は、是非とも「イタリア歌曲集」を訂正して下さい。コンティとマルチェッロの名誉のためにもお願いします。
参考:これもCecilia Bartoliの歌で決まりですね。