オペラの原点:バロックオペラの楽しみ

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ヘンデル・オペラの魅力:アルチーナ

アルチーナ(Alcina)』は、ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデル(1685-1759)が、ロンドンのコベント・ガーデン劇場でオペラを発表していた時代(1734-41)の作品。『アリオダンテ』と同じく、この時代のヘンデル作品は評価に恵まれず、やがてヘンデルはオペラ作曲そのものをやめてしまいます。

1735年に初演されましたが、当時はさんざんな評価でした。台本はリッカルド・ブロスキの『アルチーナの島(L'isola di Alcina)』。ルドヴィーコ・アリオスト叙事詩「狂えるオルランド」を題材としています。ヘンデルは他にも「狂えるオルランド」を題材としたオペラ『オルランド』『アリオダンテ』を作曲しています。

以下が粗筋です。

邪悪な魔女の姉妹アルチーナとモルガーナは孤島に住んでいます。

姉のアルチーナは、その比類なき美貌と魔法で男を魅了し、自分の島に連れ去りますが、飽きるとその男を獣や木石に変え、捨ててしまいます。アルチーナの島はそのような動植物で溢れています。

一方、ブラダマンテは、アルチーナに捕らわれた恋人ルッジェーロを探しに、男装してアルチーナの島へ潜入します。苦難の末、ブラダマンテはルッジェーロとの再会を果たし、二人は協力してアルチーナの魔力の源泉である魔法の甕を破壊します。すると、アルチーナの魔法は破れ、動植物に変えられていた男たちは元の姿へと戻ります。

以下、脇役ですがオロンテのアリアを紹介します。オロンテはアルチーナの妹モルガーナの恋人です。

第二幕第十場。

モルガーナは、オロンテという恋人がいるにも関わらず、男装のブラダマンテに恋してしまいます。嫉妬するオロンテは、アルチーナを唆(そそのか)し、ブラダマンテを獣に変えさせようと企てますが、モルガーナはアルチーナを説得し思いとどまらせます。そして、オロンテに、誰を恋するのも私の勝手と捨て台詞を残して立ち去ります。オロンテは、あまりの事に怒りに身を打ち震わせます。

(オロンテ)
恩知らずが侮辱するだけでなく軽蔑するようになったか?
さあ:、勇気をだせ、オロンテ、
貴奴(きゃつ)を魂(たましい)から追い払え;
そして、もしあいつが戻り、悔いて再びお前を愛するならば、
同じ手口であいつをくじいてやる.

そは狂気, そは惨めな情愛、
あやつが麗しさならず、
打ち負かせし
高慢に、我が心を。

来たれ、唇と眉が上へ、
胸が内にて育まれし憤怒よ、
侮辱されし愛の息子よ。

(ORONTE)
All'offesa il disprezzo giunge l'ingrata?
Su: coraggio, Oronte,
scaccia costei dell'alma;
e se mai torna pentita a riamarti,
deludi l'arti sue con l'istess'arti.

È un folle, è un vile affetto,
non è la sua beltà,
che trionfar la fa
superba del mio cor.

Vieni, sul labbro e al ciglio,
Sdegno, che nutro in petto,
Figlio d’offeso Amor.

参考:Andrei SKLIARENKOの元気な歌声をどうぞ。



※ 知らない歌手でしたが、怒りながらも自分に酔っているようなオロンテが表現されていて興味深いです。