オペラの原点:バロックオペラの楽しみ

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ヘンデル・オペラの魅力:タメルラーノ(2)

タメルラーノ(Tamerlano)』は、ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル(1685-1759)がロンドンに居を構え、王立音楽アカデミーに招かれてから作曲されました。初演は1724年ロンドンの王立劇場。作品が書かれた当時の状況や、オペラの粗筋については「タメルラーノ(1)」をご参照下さい。

以下、引き続き、主役であるバヤゼットのアリアを紹介します。

第一幕第六場。

今やタメルラーノの手先と化したアンドロニコに、バヤゼットとアステリアは直接申し開きを聞きたいと詰め寄ります。そして、バヤゼットはタメルラーノの申し出は断固として受け入れられないし、娘アステリアの意志も自分と同じであると吐き捨てます。

(バヤゼット)

もうお前に話すことはない!行け!
余が敵に答えるがよい。
その答えとは
アステリアの拒絶と余の首だ

天も地も怒りの武具を取れ、
余は無敵なる死を選び、強くなろう。
和平や王国を見捨てし者は
死など恐れぬのだ。

(VAJAZET)

Non più! ti dissi, vanne.
La risposta tu rendi al mio nemico,
e la risposta è questa:
il rifiuto d’Asteria e la mia testa.

Ciel e terra armi di sdegno,
morrò invitto, e sarò forte.
Chi disprezza pace e regno
non potrà temer la morte.

このアリア、本当は怒り狂った人の心情吐露のはずなのですが、長調で、とても陽気に聞こえます。他の作品でもそうですが、ヘンデルは人が怒っている場面のアリアを、長調で軽快なテンポで作るので、とても楽し気に聞こえてしまいます。

ヘンデルは、とても怒りっぽい人で始終切れまくっていたらしいですが、このような作品から察するに、ある場面でカンカンに怒っても、次の場面では決してそれを引きずらず、ケロッとしていたのではないでしょうか。私には、とても憎めない人柄だと思います。

参考:Rolando Villazónの力強い歌声でお楽しみ下さい。